この出会いと経験に100万点!

გამარჯობა! SSL(Student Staff Leader)のR.T.です。もうすっかり秋ですね。近況ですが、私はようやくNintendo Switchを購入することができました。しかし今学期は履修している授業も多く、勉学との両立に悩んでいます。

さて今回は、10月に碓氷峠を訪れたときのようすを書き残します。碓氷峠とは群馬県横川と長野県軽井沢を結ぶ天下の難所であり、長野県側の軽井沢は標高939mと峠 (960m) との標高差がほとんどないのに対し、群馬県側の麓・横川の標高387mという極端な片勾配で知られています。そのため、一般的な山脈ではトンネルで抜けることで峠越えの高低差を解消できる両勾配を持つことが多いのですが、ここではそれが出来ないことから、近代に至るまで通行に多くの困難を抱えてきました。今回はその碓氷峠を、徒歩で踏破したいと思います。

私は富山県民なので、帰省したり逆に東京に行ったりするときにしばし北陸新幹線を使います。在来線・車では6~7時間かかるところを、新幹線ならば2時間あまりと、とても便利です。この新幹線を使えば、軽井沢駅までも、東京駅から約1時間で到着します。しかし!!!!そんなことでよいのだろうか。それは現代文明に甘えているのではないか?己の肉体に負荷をかけ先人たちの苦労を知ることではじめて、現代文明のありがたさと生の喜びを実感するのではないか?そう思い立ち、人々は山を目指すのです(私見)。

わくわくとドキドキと大量のカフェインで眠れません

朝7:00過ぎ。新宿駅を出発し、高崎線の終点である群馬県高崎駅を目指します。約2時間半電車に揺られ、都会の喧騒から大自然の秋模様に移りゆく中、高崎駅に到着。新幹線2面4線、在来線3面7線からなる広大なターミナル駅に驚きながら、6つある在来線のうちのひとつ、信越線に乗り換えます。終点の横川駅まで約30分、風景はまさに日本の田舎といった趣に変化し始めます。日本画の世界のように奇怪な風光が印象に残る妙義山、そしてはるか遠方には噴煙と雪化粧で彩られた浅間山の頂が顔をのぞかせており、私の旅情をくすぐります。これからの展開に期待と不安を入り混ぜながら、朝10:00ごろ、横川駅に到着します。

ここからは鉄道線がないので、軽井沢駅直行のバスに乗り換えます。が、横川駅周辺の混雑具合をみて、私は驚きます。駅周辺の施設や駐車場はどこも満員状態。さまざまな鉄道車両が保存され横軽線の歴史を伝えている「碓氷峠鉄道文化むら」と有名な駅弁老舗「おぎのや」があることは知っていましたが、こんな盲腸線の終着駅に、どうしてこんなに多くの観光客が…?その疑問はすぐに解決します。先述の鉄道文化むらは、2020年10月現在大ヒット公開中の映画『鬼滅の刃 無限列車編』とのコラボ中とのこと。ふと思い返せば、信越線全体でコラボしているようすを見かけた気がします。実は私も、原作漫画を全巻読了するほどのファン。こちらも映画を観に行かねば…不作法というもの…

気を取り直して、国道18号碓氷バイパスを通り、バスは軽井沢を目指します。複雑で急峻な道を進む中、私はこの後これを己が身一つで踏破しなければならないのかと、少し不安になります。峠を越え長野県に入ると浅間山の全貌が見え始め、その雪と噴煙に加えて美しい紅葉と青空に彩られている山は、私になんとも言えぬ感慨を与えます。はじめて見た景色なのに、どこか見覚えがあるような感覚… そうだ!亜欧堂田善の『浅間山図屏風』です!あの傑作が、卓越な表現力と大自然の圧倒的な存在感によって、まさに私の前で生命力を放っていました。

その景色を見た私の頭は洗いたてのブラウスのように真っ白になりました

午前10:50ごろ、少々渋滞に巻き込まれたものの、ほぼ予定通りに軽井沢駅に到着。やはり軽井沢、日本有数のリゾート地ですね。ショッピングセンターは大混雑。新幹線が停車するたびに、駅前は人であふれかえります。しかし、今日の目的地はここではありません。駅から北へ進み約2km、旧軽井沢銀座商店街に到着。そこで牧場のソフトクリーム(おいしい!)を食べた後、歩みを北東に向けます。ここからは旧中山道、標高1200m地点の見晴台まで登り坂、碓氷峠越えの始まりです。雲一つない、あまりにも良い晴天。美しい紅葉に囲まれながらの散歩は、まさに森林浴といった趣。そう気持ちよくなっていたのも束の間、しんどい。延々と続くかのごとき坂道は、じわじわと私の体力と精神を削ります。熊出没注意の看板に怯え悠々自適に駆け抜ける自動車を妬ましく思いつつ、正午ごろ、見晴台に到着。私はすでに憔悴しており、折り返して帰途につこうかとも考えましたが、この場所は、そういった疲れすら忘れさせてくれました。絶景かな。筆舌に尽くし難い、写真では伝えきれないほど美しい光景が、私の眼前に現れます。西には紅の山肌とはっきりとした稜線が美しい浅間山、南には奇怪なシルエットが際立つ妙義山と地平の彼方まで続く山々、東には広大な関東平野がまさにひらけていく景色を見ることができます。感動に元気をもらい、おにぎりを食べて体力を回復した後、いよいよ約9kmの遊歩道に突入します。

はじめて単独潜入したのは、立山でまだ私は7歳の頃

どうみても道ではない。遊歩道の入り口にさしかかったとき、私はそう思いました。左右から草木が迫り、足元が基本見えない。少し進んでいくと倒木や流水、落石は当たり前。かろうじて遊歩道の目印として設置してある杭やリボン?を目印に、道なき道をかき分けます。耳を澄まして聞こえてくるのは、風と鳥のさえずりだけ。なんとも美しい景色と清々しい空気が流れています。本来ならば歌でも詠みたいところですが、熊出没注意の看板が脳裏をよぎり、足は止まることを許してくれません。しかし足を速めようにも、下り一辺倒の道が続く中で視界は悪く、足場も脆い地点が多々あります。遊歩道は総計約3時間の道のりとなりましたが、すれ違ったのは、合計で10人もいませんでした。こわい。体力よりも精神との戦いになるであろう、そう思いながら歩みを進めます。人工物を目にした時の安心感といったら、それはもう格別です。朽ち果てたバス… これも街中でみれば恐怖の対象だったかもしれませんが、今だけは心のよりどころです。まさに「生きてるって感じ」がします。先人たちはこんなところを自らの足で切りひらき、文明を築き上げてきたのかと思うと、感動で身震いしてしまいます。

あついのはおふろだけでじゅうぶんだよ

道をかき分け幾何の時間が経ったでしょうか、ようやく文明の音が聞こえてきます。あそこに見えるのは、国道18号のアーチ橋と坂本宿。しかし、今回の道中、軽井沢駅から見晴台までは上り約300mであるのに対し、見晴台から横川駅までは下り約900mです。この急峻な片勾配こそ、先人たちを苦しめてきた碓氷峠の特徴なのです。このあたりから、ずいぶんと急な下り坂が増えた気がします。ゆっくりと足を踏みしめながら歩きますが、耳元に羽虫が通り過ぎる度、驚いて走り出してしまいました。危ないのでやめましょう。続いて、刎石山という、いかにも物騒な名前の山にさしかかります。ん?あれは!

柱状節理!柱状節理じゃないか!柱状節理がたいへんきれいに保存されており、10分間ほど観察して心が癒されました。さて、と歩みを戻してすぐ、足元が明らかに変わり始めます。足元には、先ほど見た柱状節理の欠片のような火山岩質の石がごろごろ転がっています。踏むと痛いしよく滑る、最悪の足場です。ここで気を抜かず、さらに注意して進んでいきます。そして、木々の合間から車道が見え始めます。14:40ごろ、国道18号との合流地点に到着。これにて峠越え完了です!

お散歩道 高き山頂は未だ見えず

まだ旅は終わりません。群馬県側には、「アプトの道」という旧線跡を利用した遊歩道が整備されています。この道をさらに歩き、今回の旅の目的のひとつである「アレ」を見に行きます。それは「碓氷第三橋梁」、通称めがね橋です!一瞥してすぐにわかる、レンガ造りのアーチ橋建築の傑作です。アーチ橋を嫌う人類がいるでしょうか?私のお気に入りのアーチは、現代文明を感じられる鋼鉄製の中路アーチ橋やブレースドリブアーチ橋なのですが、こういった煉瓦造の充腹アーチも大変美しいですね。明治時代の趣と、先人たちの苦難と努力の歴史が、ひしひしと感じられました。そして復路、ついでではありますが碓氷湖を見に行きました。ダム湖はあまり私の琴線に触れませんので期待していませんでしたが、太陽の光が反射する具合がなかなかに絶妙で、印象に残りました。さてさてみなさん、お待たせしました!温泉タイムです!残念ながら私の入浴シーンを映すことはできないのですが、疲れた身体を癒す、最高の湯心地でした。露天風呂からは妙義の山々が遠望でき、眺望も抜群です。そんな昂揚感をもったまま、横川駅までの帰路につきました。帰りの高崎線は新宿まで一本で行ける普通の通勤電車でありますが、幾度の困難と経験を乗り越えたその日は特別な気分で帰ることとなりました。

世界のすべては私の経験値

こうして、かねてからの宿願であった私の碓氷峠チャレンジは達成できました。完走した感想ですが、

・おおむね下りが続き、体力的には問題ない。しかし精神面へのダメージが大きいため、二人以上でチャレンジすることを勧める。

・明確な熊対策を準備していれば、精神面でもう少しは余裕を持てたかもしれない。

・虫除け対策は万全にすべき。ヤマヒルとスズメバチには気をつけよう!

・行きたいところ全てを回りきるほど時間の余裕がなかったので、往路か復路のどちらかは新幹線を使ってもよいと思った。

いくつか反省点もありますが、私の青春の一幕に良い思い出を残すことができたと、大変満足しています。人生の峠も、うまく登っていけるように頑張りたいと思います。

以上、ご通読いただきありがとうございました!なにかしら参考になりましたら幸いです。

R.T (Student Staff Leader)